大城初美さん 社会福祉法人愛の園福祉会・理事長

子どもの目線になる

まあ、そうですか。ルーブルこども園の森で子どもたちと遊んだんですか。あそこはいいでしょう。こども園のある土地の約半分をあえて開発せずに森として残しているんです。あそこには御嶽(うたき)というね、うーとーとー(お祈り)をする場所があるの。大きな岩が2つ並んでいたでしょ? 「クガニムー(黄金の森)」と「ナンジャムー(銀の森)」と呼ばれていてね、夫婦岩なんです。ええ、だから、子どもを守り育てる場所として最適なんですよ。

こういう御嶽の歴史はね、地域のおばあさんが教えてくれるんです。地域の歴史をずーっと紡いで、つなげてきたひとたちがいるんですよね。おじいさん・おばあさんから、お父さん・お母さんへ、そしてわたしがいる。子どもたちも、あなたたちだってそうですよ。命のバトンがつながって、いまがあるんですもの。

子育ては、一方的にはできないんです。ご家族と保育士、地域の方がともに向き合うことで初めて子どもが育つと思うんです。保育士には、それぞれのひとたちをつなぐ役割がある。0歳の子どもは、3時間であたらしい言葉を獲得し、口にすると言われています。昨日しゃべれなくても、今日はしゃべれる言葉があるのよね。子どもの成長のものすごさを目の当たりにした保育士は、ご家族とそれを共有する。お互いがつながる心をもつことが大切です。こども園にご家族や地域の方をお迎えする日には、参観ではなく「参加」をしてもらいます。子どもと一緒になって遊んでもらうんです。そうやって、子どもの目線を知ってもらいます。

あるとき、こんなことがありました。保育士の同級生が親になってこども園にやってきたんです。「○○ちゃん」と同級生のことを呼ぶ保育士に注意したんです。「あのひとは親になったんだよね? 敬意をもって接しなさい」って。あなたの同級生であることには変わりないけれど、先生がニックネームで自分の親のことを呼んだら、子どもはどうなると思う? と。自分の親を尊敬できる子に育てるためにも、子どもの目線になることが必要なんです。それはおじいさんやおばあさんにも同じこと。当法人は高齢者施設も運営していますから、職員にもよく言います。「子どもの目線、お年寄りの目線、違うでしょ? それぞれの目線をとらえることが大事だよ」って。

ひととしての器を大きくすること

ピーマンやゴーヤを畑で育て、田んぼでは稲を栽培します。一生懸命水やりをして咲かせたピーマンの花。子どもたちが「先生、見て見て!」と言っています。小さな花を美しいと感じる心が育っていると思うんです。

自然のなかの遊びは自然の恵みを知り、知能を育みます。子ども時代に大切なのは知識をためることより、知能遊び。どんなに知識をたっぷりと入れても、アイデンティティや人間性がないと事あるたびに自らを苦境に追い込むひとになってしまうと思うんです。知能遊びは、人としての器を大きく育てます。それは、子どもだけでなく、ともに働く職員も一緒です。大きな器があれば、いろんなことが吸収できるでしょ? 受容していく力も大切になってきますよね。

こども園は音楽に力を入れていますが、「自分は音楽ができないからここで勤められない」と言った保育士がいました。誰にでも得手不得手はありますよね。「でもあなたは、音楽が苦手な子どものことが分かってあげられるんじゃないの?」と言いました。それに、彼女は絵が上手だったんです。だったら子どもたちと絵をやったらいいじゃない、と伝えると安心したようで、しごとを続けてくれました。

こども園にやってくる保育士には、最初に「ここで何がしたいですか?」と聞くようにしています。アイデアを自分のやり方で実践してほしいと思うから。ただ、目標を立てた終着点だけはぶれないように。そこに向かう方法は職員にまかせています。

わたしね、信頼って自然にわきあがってくるものだと思うんです。つくられてできるものじゃないでしょう? のびしろこども園のまわりに桜の樹を植えたんです。桜が満開に咲いて、「見て!」とその美しさを教えてくれる子がいて、地域の方々も桜を見に来てくださって。そういう信頼を土台にした風景をいま、夢に見ています。きっと実現する夢、よ。

教えて、あなたの必需品!

絵本『かわいそうなぞう』と『しろいうさぎとくろいうさぎ』

戦争が語られている『かわいそうなぞう』は、戦争で多くの命を失った沖縄の子どもたちに語るべきだと、卒園生にプレゼントしていました。『しろいうさぎとくろいうさぎ』は、ひとを好きになったときのなんとも言えない気持ちがあらわれていて、よく読み聞かせをしていました。両方とも大事な絵本です。